月刊アクアライフ前編集長の山口正吾様より、小説「そこに沈む魔女 アクアリウムライライラ」にコメントをいただきました。

※一部、アクアリウムライライラのネタバレを含みます(~第二冊三章)

山口正吾

 小さい頃はフィクション(創作物語)が好きであった。しかし、社会人になるとその手の読み物との距離が徐々に大きくなっていった。理由はよくわからないが、自分にあまり余裕がなかったのだと思う。他の人の作った物語に入り込むのは、(私にとって)気力や体力が必要だ。であるから、その間に発展した携帯小説やライトノベルにはとんと疎い。とはいえ、この数年は長いブランクから抜け出しつつあり、少しずつフィクションに手を出すようになった。これも理由はよくわからないが、子供が成人したこともあり気持ちに余裕ができたのかもしれない。

 そんな折、アクアライフブログで常日頃ご協力いただいている板近氏より「自身の小説をウェブで連載する」という連絡をいただいた。発表の場は自身ともう一人のスタッフ(編集、イラスト担当)とで作られたサイトであるとのこと。なんでも自前なのは今時なのかもしれないが、将来的な目標は紙での出版なのだという。

 さて、そういった経緯でこの度のコメントの依頼をされた。正直なところ、こうした書評には慣れていない。実用、とくにペットやアクアリウムの分野では色々な仕事をやらせてもらっているが、フィクションに触れアウトプットする作業はおそらくこれまでになかったことである。というわけで、こうした物語の書評の塩梅もわからないが、未読の人にとって何かしらの案内になればと思い筆を進めてみる。

 

 舞台は主に以下の二つになるのであろう。主人公の住む日常と、主人公が飛ばされた非日常。非日常はネタバレになるかもしれないが、水槽の中の世界である。私を含めアクアリストと呼ばれる水槽愛好家にとって、この物語の非日常にある描写は「なるほど」「あるある」と膝を打つものがある。

 アクアリスト以外ではどうであろうと想像してみた。主人公からは愛嬌が感じられる。水槽の世界に現れるキャラクターたちも個性的だ。キャラの書き分けはスムーズであるし、水槽の世界であるという理由で読みにくさを感じることはなさそうだ。著者の板近氏は、「アクアリスト以外にも読んでもらいたい」とおっしゃっているし、その点の配慮は十分にされている様子である。

 物語は、非日常に飛ばされた主人公が、非日常で経験するあれやこれやで大人の階段を登っていく……という成長譚なのかもしれない。「しれない」というのははなはだ無責任であるがまだ全編が完結していないので、私にもその辺りは断定できない。また、各所には伏線めいたものが散りばめられている。「めいた」というのははなはだ無責任であるが……(以下同文)。

 このような状態で原稿を渡される、これは板近氏も相当な無責任であろうと思う。なんだかモヤモヤする。「その先を知りたい、早く完成してほしい」それが今手元にある原稿を一通り読み終えた感想である。

 

 ……案外、フィクションから遠ざかっていた自分もこの物語にはしっかりと入り込めているようだ。みなさんもこの長大な物語を読み進み、主人公とともにびっくりしたり、ハラハラしたり、悲しんだりしてほしい。きっとそれは悪くない時間の過ごし方になるのだと思う。

(私が読んだのは「そこに沈む魔女 アクアリウムライライラ」約10万文字。まだこれで半分にも届かないという)。

Profile

株式会社エムピージェー出版部長。40年以上の歴史がある熱帯魚情報誌『月刊アクアライフ』において、2000年から2020年まで編集長を務めた。現在もアクア雑誌、書籍を手掛け、2020年に開設したアクアライフブログでもアクアリウムの魅力を発信し続けている。

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