【アクアの雑談出張版】アクアリウム小説はじまります

みなさまこんばんは、猫と鯰舎です。

本日は、アクアライフブログの連載である「アクアの雑談出張版・・・

 

猫と鯰舎の執筆担当板近が、株式会社エムピージェー出版部長で月刊アクアライフ前編集長の山口正吾様と、小説「そこに沈む魔女 アクアリウムライライラ」について対談させていただきました!

小説公開前・・・・・に行なった雑談、どうぞご覧ください!

※小説「そこに沈む魔女 アクアリウムライライラ」は現在公開中です。

アクアの雑談出張版!

山口:このたびは板近さんが自身で執筆された小説を発表されるとのことで、それについて対談をさせていただこうと思います。私が質問することが多いだろうし、インタビュー的な対談になるとは思いますが。

板近:よろしくお願いいたします。

山口:ではではまず読者さんに向けて、自己紹介をさせていただきますね。私、山口正吾は月刊アクアライフなどを発行している株式会社エムピージェーで出版部長をしております。板近さんとはアクアライフブログや月刊アクアライフの企画などで、一緒にお仕事をさせていただいており。

板近:いつもお世話になっております。ちょうど今も、一緒に月刊アクアライフの記事を作らせていただいているのですよね。

山口:ええ。月刊アクアライフ2022年6月号(発売済)には、板近さんの「スマホで簡単“いい感じ”ベタ撮影術」と、二人で審査員を担当した「#ALベタ写真コンテスト」の結果発表が掲載されるのでぜひご覧下さい。

板近:ぜひぜひ!

アクアライフ2022年6月号
アクアライフ2022年6月号表紙、購入はオンライン、書店、アクアショップなどで! ©エムピージェー

山口:そして今回は、いつも板近さんと熱帯魚などについていろいろ語り合っている「アクアの雑談(アクアライフブログ連載」の出張版になります。

板近:初の出張版ですね! そのお題が私の書いた小説……なんだかすごく嬉しいです。

山口:(笑)。ではでは、小説のタイトルをどうぞ!

板近:『そこに沈む魔女 アクアリウムライライラ』です!

まずは作者紹介から

山口:まずは板近さんの紹介からいきますか。

板近:これは緊張しますね。

山口:たしかに、こうやってコーナーを設けて紹介するのは初ですね。

板近:何から話していいか……わからなくなりますね。

山口:(笑)。では、私が進行させていただきますね。

板近:お願いいたします。

山口:冒頭でも少し触れましたが、板近さんはかれこれ二年ほど、社外からの協力スタッフとして、アクアライフブログの運営に協力していただいております。

板近:いつもありがとうございます。

山口:こちらこそ。そして、アクアライフブログに携わる以前からのアクアリストでもあると。

板近:はい。

山口:スパイニーイールへの熱いこだわりがあり、その様子は時々アクアライフブログでも披露されていますが。

スパイニーイール
スパイニーイール
アクアライフブログ過去記事にも登場した板近飼育のスパイニーイールたち(※二枚目画像、体に付着している白い点は底床に使用している砂)

板近:好きですね、スパイニーイール。

山口:アクアリウムは小学生の頃からでしたっけ。

板近:母が生き物好きだったのもあり、いつから魚と触れ合っていたかは曖昧なのですが、私自身がアクアリウムをやりだしたのは小学生の時であっていると思います。

山口:板近さんといえば、カメラの話も欠かせませんよね。カメラがお好きでいろいろと集められていて。

PENTAX
PENTAX
最近はコンデジ集めにハマり中。一枚目のカメラはアクアライフブログにて“熱帯魚撮影”レポートを公開中

板近:それも趣味の一つですね。そう! 昨日、スパイニーイールのあくびの撮影に成功したんですよ。

山口:あ、それはいいですね。ぜひ見せて下さい。

板近:私も山口さんに見せたいなと思っていました(笑)。

スパイニーイール
あくび。少し前まで潜っていたのか、頭に砂が乗っている

山口:(笑)。写真の関連で言えば、アクアライフブログにて過去二回開催したアクアライフブログフォトコンテスト。この企画も板近さんの発案です。

板近:フォトコンは本当に嬉しかったですね。山口さんが企画を採用してくれて、実際に始まったらたくさんの方が投稿してくれて。

山口:板近さんの投稿作品へのコメントなどは、毎回私も感心しきりで。

板近:恐縮です。

板近の創作歴

山口:アクアリストでカメラ好きな板近さんは、執筆もお好きというか、割と日常的にされているのですよね。

板近:そうですね。今は仕事としても書かせてもらえるので、さらに身近な存在となりました。

山口:文章も小さい頃からですか。

板近:小学生の頃からですね。

山口:執筆にもいろいろありますが……たとえば日記もそうだし、SNSの投稿だって執筆と言える。

板近:お……どちらも私が長続きしなかったやつですね。

山口:そこは苦手なのですね(笑)。そんな中で、書いてきたのはどんなジャンルなのでしょう。板近さんは実用系記事なども書かれていますが、今日は創作という枠で教えて下さい。

板近:はい。まずは、現在進行系の話から。これはこうしたオープンな場所では初めて話すことでもあるのですが、月刊アクアライフの連載、「熱帯魚なんだもん! 熱帯魚擬人化図鑑」の本文を担当させていただいております。読んでくださっているみなさま、ありがとうございます。

熱帯魚擬人化図鑑
月刊アクアライフ2021年4月号より ©熱帯魚擬人化図鑑PROJECT

山口:熱帯魚擬人化図鑑は“中の人”という名義で書かれていますもんね。

板近:板近という名前が出たのは、このアクアの雑談からなんですよね。熱帯魚擬人化図鑑はそれ以前(2018年8月号)からの連載で。

山口:創作をしだしたのは、いつ頃であったのでしょう。

板近:それも小学生の頃ですね。ノートに漫画を描いていました。

山口:随分と早いですね。私が夏休みの絵日記に四苦八苦していた頃に、自身で物語を書いていたと。

板近:学校で、友達が描いた漫画を読ませてもらったりしていたんです。その影響が大きかったのかなと思います。

山口:小学生の頃は文章での創作はされていなかった?

板近:文章は、漫画よりも真剣に取り組んでいました。ただ、書き始めた頃は、読書感想文などの学校の課題としての作文に夢中になっていて。小説とはまたちょっと違うものだったんですね。

山口:その後、創作に進んだと。

板近:ええ。創作開始の時期は曖昧で、小学生の時かもしれないけれど、そうじゃない気もして。中学では書いていた記憶があるのですが。

山口:意外と覚えていないものなのですね。

板近:そうみたいですね。

山口:これまで、何作品くらい書いてきましたか。

板近:これはぜんぜんわかんないですね。

山口:数え切れないほど書いてきた?

板近:私の場合、数え切れないというより、数えてなかったからわからないというほうが合うかもしれません。書き上げた作品ばかりでもないですし、同じ題材で何度も書いたりもするので、数がよくわかんなくなっちゃってるのもありますね。

山口:昔から、小説家としてデビュー、あるいは作品を発表することを視野に入れて書いていたのですか。

板近:最初は特に考えておらずただ書くだけだったのですが、ある時期から賞に送るなどもするようになりました。

山口:だんだんと、デビューへの思いが強くなっていったのですね。

板近:そうですね。そうした意識を持つことで、作品作りに対する視野が広がったように思います。

自分たちでサイトを立ち上げた理由

山口:今回の作品は、聞くところによると、自分たちで立ち上げたサイトで連載されるのですよね。

板近:はい。編集、イラスト担当の“だっくるさん”とともに立ち上げた“猫と鯰舎”のサイト(今ご覧頂いているサイトです!)になります。

山口:サイトの準備などは全てお二人で?

板近:ええ。catcatfish.comというドメインがあいていた時は、二人で喜びました(笑)。

山口:(笑)。あえて自分たちでサイトを作った理由はなんでしょう。

板近:小説の公開方法はいくつか案があり、かなり迷ったのですが、最終的に自分たちのサイトという自由度の高い場所から始めようとなりました。二人ともサイト作りや運営の仕事をした経験があるので、それを活かせないかなという考えもあり。

山口:なるほどです。小説は最後までまとめて掲載か、小分けかどちらでしょうか。

板近:小分けですね。連載という形になります。

山口:作品はもう書き上げてありますか? それとも、執筆しながら連載ですか。

板近:ある程度書き溜めてはあるのですが、完結まではまだ書き起こせていません。

山口:つまり、構想はあると。

板近:はい。アクアリウムライライラのラストは決まっています。

執筆のきっかけは編集者?

山口:今回の作品を書き始めたきっかけというのは、どのような感じだったのでしょう。

板近:きっかけは、だっくるさんですね。

山口:ほう。

板近:だっくるさんと私が猫と鯰舎として組む前に、編集者とライターとして、企画案を話し合う機会があったんです。

山口:新しい企画が出来ないかと。

板近:はい。そこで私は、チャンスだと思ったんですね。

山口:チャンスですか。

板近:だっくるさんという、プロの編集さんがいる状態で小説を書くチャンス。つまり、デビューのチャンスだと思ったんです。

山口:それまでは、編集者がいる状態で小説を書いたことはなかったのですね。

板近:ええ。なので、このチャンスを逃してなるものかと、急いで小説数話分と企画書を用意して提出しました。

山口:それをだっくるさんが気に入って、話は動き出したと。

板近:その時点では「これで行きましょう!」とはなりませんでしたが、前向きなお返事をいただけました。そこが、第一歩ですね。

山口:板近さん個人の動機みたいなものはありましたか。こんな作品を書いてみたいという、思いがあったとか。

板近:アクアリウムの小説というアイデアは、だっくるさんに見せる前からあり、実際に書いたこともありました。

山口:たしかに、アクアと小説どちらも好きな板近さんであれば、自然と思いつきそうです。それは賞に出すなどされたんですか?

板近:いえ、その小説は完成まで書き上げることが出来なかったんです。

山口:その経験が、いつかアクアリウム小説を書き上げたいという思いにつながった?

板近:そうですね。それともう一つ動機につながったのは、過去に出版社に送った作品です。世にも出なかったし、アクアリウムとは関係ない内容の作品でもあるのですが……。

山口:その作品とテーマが近い?

板近:近いですね。その小説は長らく私の最高傑作で、なかなか超えられなかったんです。また、その作品を、新しい作品に活かすこともなかなかできなくて。

山口:ある意味、壁のような存在でもあったわけですか。

板近:はい。その小説は、書いている時にも書き終わったときにも、大きな満足感があったこともあり「あの作品を書いた時のような感覚をもう一度」みたいな、漠然とした思いもあったんです。

山口:その思いも今作につながっているのですね。

板近:ようやく超えれたし、活かすこともできました。だっくるさんには本当に感謝しています。

小説の内容について少し……

山口:ではここで、ネタバレに気をつけつつ、内容についてお聞きできたらと思います。

板近:配慮ありがとうございます。でも……ネタバレなしでいけますかね。

山口:難しいかなぁ。では、核心的なところは避けつつ、少しだけ触れていきますか。

板近:そうですね。あ、この雑談公開時に「ここ」をクリックしたらネタバレ部分をすっとばせる設定にさせていただく形でどうでしょう。

山口:ブログならではの技ですね(笑)。ではそれで行きましょう。

板近:はい!

山口:と、その前に………私はこの度の小説に少し目を通していますということを、お伝えしないといけないですね。

板近:読んでいただきありがとうございました。

山口:今から私の素朴な疑問など交えつつ、感想をお伝えしますね。内容の紹介にもなると思いますし。

板近:お願いいたします。

山口:私が読んだのは途中までですが、あれでだいたい、全体の半分くらいなんですかね。10万文字はあったと思いますが。

板近:具体的な長さはまだ伏せておきたいのですが、半分以下であるということだけお伝えさせていただきます。

山口:けっこうな長文ではありましたが、まあ、重くない感じで読み進めることはできました。

板近:よかったです!

山口:まず主人公は、魔法使いでいいのかな。作中では魔導士とかいいましたっけ。

板近:はい。

山口:まだ若い女の子で。魔法に自信があって、そのために少し向こう見ずなところもある。そんなキャラであったように思います。

板近:こうして山口さんから、ライライラ(主人公の名前)の人となりを聞けるのは嬉しいですね。

山口:勉強しなくても、魔法が使えるという。

板近:“魔導書いらず”と呼ばれる優秀な子で。

投げ込み式フィルタ
投げ込み式フィルターに“魔導士として”対面するライライラ

山口:そもそも、魔法はフィクションですが……フィクションとしますが……魔法って勉強がいるんですかね?

板近:この作品の世界であると、勉強は必要であると思うんですね。魔法を使う時のモラルだとかルールだとかもあるし、魔法そのものだけでなく、魔法絡みで学ばないといけないこともある。

山口:作者にとって、勉強を必要とする必然性があったと。

板近:はい。

山口:そんな魔法使いが主人公であって、ちょっとしたきっかけで異世界に転送されてしまう。そしてその異世界がアクアリウムであると。

板近:ええ。水槽の中ですね。

ライライラは突然現れた魚に飲み込まれ水槽の世界へ……

山口:実は私は読みはじめてしばらくは、ライライラが転送された世界がどういう世界なのか、うまく想像ができずにいたんですね。

板近:そうでしたか。

山口:すぐわからないようにしたのは、意図した仕掛けなのですかね。ライライラが水槽の中だと知るまで、他の文含め「水槽の中です」と明記されることはなかったと記憶しているのですが。

板近:はい。“アクアリストとしてはこれから”であるライライラの視点で描けば、アクアリウムの知識がない人でも作品に入りやすくなるのではないかと考えました。

山口:ライライラは、初めての魚を買ってきた直後に転送されているわけですもんね。

板近:ええ。魚を水槽に迎え入れる前に、つまり、餌やりだとか、水換えだとかの経験がない状態で水槽の中へと送り込まれているんですよね。

山口:この作品は“魔法使いがいる日常”というファンタジー、そしてそのファンタジーの中に異世界としてのアクアリウムがある。ファンタジーからファンタジーというか、階層が二つあるわけですよね。

ライライラ、自宅玄関にて

板近:そうですね。

山口:私、つまり、魔法の使えない世界にいる人間としては、そのあたりを読み解くのに少し想像力が必要であったんです。特に私は普段、あまり創作物を読まないので。

板近:そうおっしゃっていましたね。

山口:板近さんはそうした構造も意図的に組んでいるのかなと思ったのですが、その点はどうでしょう。構造というのは、最初は不明なことだらけで、徐々に読者も世界に馴染んでいくだろうというような、そういう進行のことですね。

板近:おっしゃるとおり、後々明らかになっていくという形で書いている事柄が多いです。

山口:やはり意図的なんですね。

板近:はい。その構造は、アクアリウムからの影響もあって。

山口:と、いいますと。

板近:アクアリウムって最初はわからないことだらけで、だんだん知識がつくことで理解できたり、飼育やレイアウトの幅が広がるじゃないですか。

山口:それを、魔法や世界観にも当てはめたわけですね。

板近:ええ。そうした楽しさも味わってもらえたらなと思いながら、構成していきました。

山口の“おもしろ”ポイント

山口:話は戻りますが、主人公が水槽の世界に飛ばされた。その、水槽の中にいる時は小さな体になっているんですよね。

板近:なってますね。

山口:ここがけっこう、おもしろい。アクアリストの一つの夢というか。

板近:ああ、ありがとうございます。

山口:アクアリストは観察者ではあるものの、同化したい、魚と同じ世界を共有したい。そんなふうに思っている人も多いと思うんですよね。これは、板近さんの願いでもあったことなのですか。

板近:そうですね。小さな頃から、水槽の中にいる自分を想像して、あえて下の方から水面を見上げるなどしていました。

山口:その思いが、アクアリウムライライラで成就されたと。

板近:書いていて、水槽の中を歩いている気持ちになれましたね。

山口:それはそれは。ではここで、水槽の中での主人公の大きさについてお聞かせいただけますか。

板近:はい。作中ではあえてはっきりと書いていないところもあるんですね。たとえば、ライライラがネオンテトラを見て「私の腕ぐらい」と言うシーンなど、そういうちょっと明確ではない感じで大きさの情報を散りばめて。

山口:たしかに作中では数字ではなく、魚や水草の大きさと比較した記述などをされていましたね。これは何か狙いがあるのですか。

ライライラとペルーグラステトラ

板近:表現的な面で言えば、魚や水草を起点に想像してほしかったという点が大きいです。あとは、実物の魚でも数字以上に大きく見えたりするじゃないですか。

山口:迫力があったり。

板近:ええ。そうした部分も含めて体感できるよう、言葉を選んだシーンなどもあります。まして、自分たちが小さくなっている世界の話ですから。

ペルーグラステトラ
作中にて「自分の腕よりも長い」と表現されたペルーグラステトラ。“実物より大きく見ることができる”写真を撮った経験を描写づくりに生かそうと試みている

山口:水槽の中の世界を体験してほしいからこその表現なのですね。その小さな主人公は、水槽の中から脱出したいと考えていますよね。だって、主人公にとっては、非日常だから。

板近:でも困ったことに、帰る方法がわからないと。

山口:その中で、水槽の住人……これは魚と言っていいのかな? 魚の化身のような、言葉を喋るキャラクターが出てくる。そうした出会いも、主人公に影響を与えますよね。

板近:そうですね。出会いがきっかけで、脱出から新しい目的を持つことになります。

山口:その目的は今日はネタバレせず、見てのお楽しみがいいのかな? うん、ネタバレありとは言ったものの、その範囲を決めるのが難しいですね(笑)。

板近:そうですね(笑)。

アクアリスト以外には伝わらない小説?

山口:まだ結末を知らない上での意見ですが、この物語は主人公、ライライラの成長譚でもあるのでしょうか。

板近:はい。

山口:出会いや経験が主人公にさまざまな気づきを与え、成長につながる。そういう物語でもあると。

板近:ええ。執筆する上でも、ライライラの成長は大切にしているポイントの一つです。

山口:私の感想としては、この小説は人物の成長譚として受け止めることができれば、割と多くの人に共感できる物語ではないかと思っていますよ。

“透明の壁”を前に試行錯誤するライライラ

板近:そうでしたか!

山口:読む前に、アクアリウムを題材にしたと聞いて「アクアリストだけに共感できるものになってしまうのではないか」なんて想像もしたんですね。でも、読んでいくにつれてどうもそれだけではなさそうだなと。

板近:ありがとうございます。アクアリウムを題材にする上で「アクアリストだからわかる」的な要素を大切にしたのですが、同時に、アクアリスト以外の方にも読んでもらいたいと思ってもいました。

山口:その両立は難しそうですね。

板近:難しかったですね。アクアネタを書く時などは「わからない人はわからないことを楽しめるように」という意識で書いていたのですが、実際にそれができているかどうか自分では判別しきれず。そうした時に、だっくるさんの存在が心強いんですよね。

山口:だっくるさんの反応はどうでしたか。

板近:主人公を魔導士にしたのは、アクアリスト以外の方でも楽しめる物語にするためでもあったりするのですが、その“主人公を魔導士にする案”が生まれたのは、だっくるさんの助言がきっかけだったんです。

山口:そこはぜひ、詳しくお聞かせいただきたいですね。

板近:だっくるさんと小説をやりだしてからしばらくは、アクアリウムライライラとは別の作品を書いていたんです。水槽の中を歩く話ではあったのですが、主人公は魔導士ではなかった。

山口:前作があったんですね。

板近:ええ。その作品を書いている時に、だっくるさんから「小説としての面白さを優先」という趣旨のアドバイスが、幾度かあって。振り返ると、その頃の私はアクアリウムをテーマにするという点に、縛られていたところがあったと思うんです。

山口:そこをだっくるさんが解き放ってくれたと。

板近:そうですね。アドバイスを取り入れるためにその作品を下げて、アクアリウムライライラに移行したら小説としての面白さが増したし、アクアリウム要素もさらに深めることができたんです。

山口:結果、“アクアリウムもの”としても良くなったわけですね。

板近:はい。前作よりもしっかりと、いい感じに描くことが出来ました。だっくるさんは、そこまで見越して言ってくれたのではないかなと思っています。

山口:主役を魔導士にするというアイデアは、だっくるさんですか?

板近:そこは私です。だっくるさんからは具体的な指示があったわけではなく、自然な感じで私がアイデアを思いつけるような流れを作ってくれたんです。

山口:板近さんのことをよく理解されていると。

板近:理解してくれていますね。私の癖や特徴も、とても良い形で引き出してくれるんです。

山口:そんなだっくるさんの力添えがあったからこそ、アクアリストの人もそうでない人も楽しめる作品になったのですね。

板近:ですね。間違いなく、私一人では到達できなかったところだと思います。

山口:だっくるさんは編集だけでなく、挿絵などのイラストも担当されているのですよね。だっくるさんのイラストの好きなところなど教えていただけますか。

板近:一番は表情ですね。最初のラフを見せてもらったときから「ライライラってこういう顔するよなぁ」と素直に思えるものだったんです。もちろん、その後のイラストも。

山口:その話からも、だっくるさんの小説への理解度の高さが伺えますね。

板近:本文からの再現度は高いですね。逆に、だっくるさんがイラストで提案してくれることもあって。それを本文に取り入れるなどもしました。

左の袋を持った人物の髪形はだっくるの提案

山口:本文とイラストの一体感も見どころのひとつなのですね。私は本文は読みましたが、挿絵付きはまだなので楽しみです。

板近:ぜひ!

小説『そこに沈む魔女 アクアリウムライライラ』は無料で閲覧可能です!

山口:では最後に、読者さんにどんなことを伝えたいか……根底にあるテーマになるのかな? そうしたものをお聞かせいただきたいと思います。

板近:「これを伝えたい!」という書き方をしていないので、ちょっと難しい質問でもあるのですが、それでもよいでしょうか。

山口:思ったままに話してもらえれば。

板近:はい。この作品では、人にしろ魚にしろ、生きている姿を描くことに真剣に取り組めたと思っています。

山口:生きている姿、たしかに描かれていました。

板近:そうした中で改めて思ったのは、好きと思う気持ちの尊さ。人であったり、魚であったり、事柄であったり。いろいろな好きがあると思うのですが、それは本当に尊い気持ちだなって。

山口:その気持ちを大切にして書かれたのですね。

板近:そうですね。それが根底にあるのかなと、振り返って思います。ラストシーンに込めた思いもありますが、それはまだ内緒ということで。

山口:ラストシーンですからね(笑)。

板近:はい。語るには早すぎるかと(笑)。あ、あともう一ついいですか。

山口:どうぞ。

板近:伝えたいとは違うかもですが、読んでくれる方にはこの作品の中のアクアリウムを楽しんでほしいと思うんですね。魚の不思議であったり、美しい水景であったり。

山口:アクアリストなら「あるある」と思うことも多いと思うなぁ。

板近:嬉しい感想です。いろいろな小ネタも仕込んでいるので、楽しんでいただけたら嬉しいです。

山口:ぜひぜひ。そんな感じで本日は、小説『そこに沈む魔女 アクアリウムライライラ』のご紹介でした。

板近:ありがとうございました。

山口:この雑談が公開される頃には、小説の連載も開始されているとのことですから、ぜひご覧ください。そうそう、猫と鯰舎の公式Twitterのほうでは更新情報などがツイートされるそうですので、そちらもフォローしていただくとよいかと思います。

板近:重要な補足ありがとうございます!

山口:(笑)。では、改めてこれから読んでくれる読者さんに向けてコメントをどうぞ!

板近:はい! アクアリウムライライラを読んでみようと思ってくださった方、ありがとうございます。これから読んでもらうことを想像すると、嬉しさとドキドキが入り混じったようなとても不思議な気持ちになります。みなさまに楽しんでいただけるよう物語を進めていきますので、アクアリウムライライラ、猫と鯰舎をどうぞよろしくお願いいたします!

そこに沈む魔女 アクアリウムライライラを読む

山口正吾 Profile

株式会社エムピージェー出版部長。40年以上の歴史がある熱帯魚情報誌『月刊アクアライフ』において、2000年から2020年まで編集長を務めた。現在もアクア雑誌、書籍を手掛け、2020年に開設したアクアライフブログでもアクアリウムの魅力を発信し続けている。

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